日本語には単数・複数の区別がない英語の学習で、日本人が陥りがちな間違いの1つが単数と複数の区別です。英語の名詞では単数・複数を明確に区別します。一方、日本語では「学生がやってきた」という表現でわかるように、必ずしも単数か複数かを明示する必要はありません。もちろん「学生が1人やってきた」とも言えますが、これはより詳しく言っているにすぎません。英語は名詞の属性として、最初から単数か複数かの区別を行います。このような考え方は日本語にはないのです。「数えられる名詞」と「数えられない名詞」の違い日本語には単数・複数の区別がないため、日本人は英語の表現での「数えられるもの」と「数えられないもの」の違いがなかなか理解できません。英語では、例えば、リンゴは単体なら数えられる名詞ですが、4つに切ると数えられない名詞に変化します。リンゴとして共通に理解されている姿形をしていないと、数えられない名詞になるのです。ちなみに切られたリンゴの複数形は、「pieces of apple」になります。appleには単数を表す「an」も、複数を表す語尾の「s」も付いていません。外国語を学ぶことは文化を学ぶことと同じネイティブは数えられるかどうかの判断を一瞬で行いますが、日本人は残念ながら頭で考えなければ理解できません。姿形がはっきりしているリンゴのような名詞ならまだしも、形のない抽象語になると一瞬戸惑ってしまいます。例えば、「divorce(離婚)」は数えられない名詞ですが、「John and Mary’s marriage ended in a divorce.(ジョンとメアリの結婚は離婚に終わった)」という言い方だと数えられる名詞になります。これは1回の離婚という意味なのです。
日本語と英語の文法の違いは、単なる言語の違いというだけではなく、実は日本人と英語圏の人々のモノの見方の違いを表しています。外国語を学ぶことは、ほかの文化を学ぶことと同じなのです。
福岡大学
人文学部 英語学科
教授 毛利 史生 先生